配偶者も子供もいない兄弟もしくは姉妹が亡くなった場合に、父母、祖父母も既に他界しているとなると、故人の兄弟であるあなたが相続人となります。ただ、予想外な人物がいることもあり得ない話ではないのでまずは被相続人に関する戸籍を調べて、相続人の確定をしましょう。

相続財産に何があるかきちんと調べましょう

 どうやら兄弟以外に相続人がいないことがわかって、さて相続の手続をしようとなっても、実は兄弟とはあまり付き合いがなかったという人も少なくないですし、付き合いがあったとしても、兄弟の資産状況など、よく知らない人が多いのではないでしょうか。相続財産として一般的に考えられるのは現金や預貯金、不動産などがありますが、貴金属、骨董品、ゴルフ会員権なども相続の対象となります。

借金はない?心配があれば相続の放棄も視野に…

 ただ、あまり付き合いのない場合や、よく実情を知らない場合、相続財産にはプラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も含まれますから注意しておかないといけません。また、マイナスの財産と共に、連帯保証人になっていないかもきちんと把握し、もしもプラスの財産よりマイナスの財産の方が多かったり、巨額の連帯保証をしていて不安がある場合などは相続放棄も視野に入れた方がよいと思われます。

 ただし、住宅ローンなどは、団信(団体信用生命保険)に加入していれば残りのローンは保険で賄われますから大丈夫です。

相続はしたいけれど借金がないか不安…。限定承認なら借金を負うことなく相続できるの?

 相続はしたいけれど不安という場合は限定承認をしておくこともよい方法です。限定承認とはプラスの財産の限度でマイナスの財産の相続も承継するというものです。つまり、相続放棄をしてしまうと全てを相続することができなくなりますが、限定承認であれば、借金が相続財産を超えていない限り、借金を相続せずに、プラスの部分の財産を相続できるということです。

 一度承認してしまうと、あとから借金が見つかった際などに知らなかったとは基本的に言えませんので、限定承認はプラスとマイナスがよくわからない場合に有効な手段です。ただ、限定承認もいいことばかりではなく、単純承認に比べると、税務上注意が必要ですし、手間もかかります。悩んだら専門家に気軽に相談をしてください。

不動産がある場合の処分について

 相続人が一人であればいいのですが、たとえば元々3人以上の兄弟で、その中の一人が亡くなった場合、相続人が複数人いることになりますが、そうすると共同相続人全員で、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書は不動産の名義変更にも必要になります。

相続財産が不動産ひとつしかないけど、どうやって分けるの?

 相続人が複数いる場合、ひとつの不動産をわけることになりますが、とりあえず共有名義にするというのは後で面倒なことになりかねません。不動産ひとつが相続財産の全てである場合にも分ける方法はあるのです。代償分割といい、誰かが家を相続し、その代わり金銭を他の相続人に支払うというものです。ただ、兄弟の相続の場合、既に自分の家もあり、これ以上不動産があっても使わないということもあります。その場合は換価分割という方法がおすすめです。これは、不動産を現金に換えて分け合います。不動産は分けるのが難しい財産ですがこうすることで平等に分け合うことが容易になるのです。

名義変更しないと問題あるの?

 名義変更の期限はありませんので、例えば亡くなった兄の名義のまま相続人が住んだとしてもそれが直接問題になるわけではありません。しかし人間の状況というのは日々変化するので、後日、いざ名義変更しようとしたときに、はじめは遺産分割に納得していたもうひとりの兄弟が、お金に困ったりして協力してくれなくなることもあります。また、もう一人の兄弟は納得してくれていたけれど、何年か経過するうちにその兄弟も亡くなり、その子供が名義変更に協力してくれないということもあり得ます。

 名義変更は費用も掛かりますし、面倒に感じてしまいがちなものですが、後々のトラブルを避けるためにも、できるときに速やかに行った方がのぞましいものといえます。

兄弟の交流が少なく、所在がわからない人もいる場合

遺産分割協議は相続人の全員の同意が必要

 亡くなった兄弟とは交流があったとしても、元々3人以上の兄弟で、相続人となった兄弟のうち1人とは連絡が取れない場合、どうしたらいいでしょう。相続人のうちひとりの行方がわからないからといって、生存している限りは相続する権利があります。遺産分割協議は相続人全員の同意がなければ終了しないのでその人以外の相続人で協議し財産を分けてしまうということはできないのです。そもそも音信不通であったり手紙や電話をしてみても全く返信もなく連絡がつかないという場合は不在者財産管理人を選任することになります。ただ、最近まで連絡がついていたのにいざ連絡をとろうとしたら急に連絡がつかなくなった、という場合は、不在とはいえないこともありますのでしばらくは返信を待ってみましょう。

不在者財産管理人とは

 不在者、つまり行方不明になっている人の財産を管理したり保存をする人のことをいいます。また、家庭裁判所に権限外行為の許可を得たうえで遺産分割協議に参加することもできます。

 相続人は不在者財産管理人にはなれず、利害関係のない親族や、弁護士等が候補者となります。また、不在者財産管理人の責務は相続の時の遺産分割協議では終了せず、不在者の所在があきらかになったり、死亡が確認(失踪宣告を含む)されるまで続きます。

何年も行方不明であったり、生死不明の場合

 民法は生きているかどうかもわからない行方不明の人に関して失踪宣告というものを規定しています。

不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

民法30条1項

戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

民法30条2項

 相当昔に家出をして音信不通であったり、乗船した船が沈没した後や大規模な災害があった後行方が分からない、などの場合に、失踪宣告の申立てを行います。

失踪宣告がなされると

 音信不通で生死不明の状態が続き7年経過した者、災害などにあって生死不明のまま1年が経過した者は法律上において死亡したものとみなされます。ただし、死亡したとされる時期はそれらで扱いが異なり、不在の場合は失踪から7年が経過した時となりますが、災害等の場合は、1年経過した時に死亡したものとされるわけではなく、その災害等の危難が去った時となります。ただし、失踪宣告がなされるまでには時間がかかるので注意が必要です。

失踪宣告申立ての手続き

 利害関係者が不明者の住所地を管轄する家庭裁判所に申請します。

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